ユーロラックモジュラーシンセを使う理由

最後に

念のため断っておきますが、東海岸スタイルより西海岸スタイルの方が優れている、ということを言っている訳ではありません。音をいじることに興味があった自分には、西海岸スタイルの思想をベースとした製品が多く見られるユーロラックモジュラーシンセが性分にあっていたというだけのことです。そもそも東西のスタイルの差などを意識せずに自由な音作りが楽しめるのがユーロラックモジュラーシンセの良いところである訳ですしね。

I Dream of Wires
I Dream of Wires

ちなみに東海岸・西海岸スタイルの歴史的な歩みとその背景に興味のある方は、映画「I Dream of  Wires」をオススメします。関係者へのインタビューや当時の振り返り等、大変興味深い内容になっています。

あと、ハードウェアサンプラーやブティックペダル、ガジェット楽器を組み合わせる際の煩わしさが一掃出来ると感じるのも、求めるスタイルの違いであって、機材を取っ替え引っ替えしない方にとっては利点であったとしても必要性までは感じないと思いますので。

ユーロラックモジュラーシンセでは、前ページで挙げたウェーブシェイパーや LPG の他に、電圧の強弱を調整するアッテネーター、シグナルを正負反転させるインバーター、その両方を併せ持つアッテインバーター、電圧の大小を比較するコンパレーター、OR / AND といった論理演算を行うロジック等のモジュールが数多く存在します。現行製品でいうと Intellijel DesignsTriattPlog 等が挙げられますが、MAKENOISEMATHSXAOC DevicesSamara のように、1つで複数の機能をこなすことのできるモジュールもあります。

Mannequins Cold Mac
Mannequins “Cold Mac”

扱うシグナルが電圧なので至極当たり前、あって然るべきとも言えますが、これらのモジュールがあるとないでは大違いです。言い換えればこういったユーティリティ系のモジュールを使いこなせるようになると、音作りや表現に一層の幅が出せるようになるんじゃないかと思います。

国内での取り扱いはないのですが、個人的に MannequinsCold Mac がオススメです。このモジュール、20個のジャックとノブが1個と一見何のモジュールなのかわからないのですが、各ジャックへのパッチングの仕方やノブの振る舞いによってロジック、パンナー/クロスフェード、インバータ、オフセット、エンベロープフォロワー、ユニティミキサー等として機能させることが出来ます。

興味のある方は、Martin Doudoroff という方の私的マニュアルページ「Patching Cold Mac」や以下の Mannequins による製品紹介ビデオを参照してみて下さい。

手前味噌ではありますが、以下は自分のセットアップで Cold Mac をメインにしたパッチの動画です。

話は変わりますが、3 Module Challenge という海外では結構前から知られている試みがあります。これは文字通り「3つのモジュールだけで表現する」というものです。巷ではモジュラーシンセというと「タンス」と揶揄されるほど大規模なイメージがあるようですが、そんな大規模なシステムを組まなくても楽曲や表現は出来るんです。3 Module Challenge はそういった観点から、最小限のセットでクリエイティビティを存分に発揮させようという試みです。

以下は宮地楽器 Wurly’s さん主催による 3 – Module Challenge コンテストの応募動画再生リストです。

こちらの応募動画を観ているだけでも、モジュールの選び方、パッチング、演奏方法、ジャンルなど応募者の個性がよく出ていますよね。同じモジュールでも使う人によって表現へのアプローチの仕方が異なるのも興味深いです。

初めからあれこれモジュールを揃える必要はなく、気になるモジュール3つからユーロラックモジュラーシンセをはじめてみてはいかがでしょうか?

 

3ページに渡ってつらつらと綴ってきましたが、横着な機材オタクがセッティングの煩わしさから解放されたくてユーロラックモジュラーシンセに辿り着いただけなんじゃないのか?と言えばそうとも言えなくもないのですが、これは後から付いてきた理由の1つであって、やはりユーロラックモジュラーシンセはいじってなんぼ。出音であったり、モジュールの使い方・応用方法など、パッチングの度に新しい発見があり、そこが一番の魅力だと思います。

使ったことのないモジュールはたくさんありますし、続々リリースされる個性豊かな新製品も気になりますしね … 🙂

まだまだ興味が尽きることはなさそうです!